ロゼッタが1週間前に第2四半期決算を発表しました。市場の期待値より低い数字だったために、翌日はストップ安となりました。そのあと10%ほど戻していますが、ロゼッタの今後の可能性について検討してみたいと思います。
1. まず、ロゼッタの主な事業は何か?
- ロゼッタは、翻訳サービスを提供しています
- 特にここ1年半ほど、MT(マシントランスレーション)という機械翻訳の事業が年率数倍の成長を続けています
- 2017年11月にリリースしたAI(人工知能)による機械翻訳のソフトが売上を伸ばしています
- 領域を5つに絞っており、化学、医薬、IT、金融、法律、の専門分野です
2. 今の足元の数字は?
第2四半期までの半年間で見ると、
- 機械翻訳: 売上9.7億円(YOY + 300%)、営利1.3億円(YOY+700%)
- ヒト翻訳: 売上7.4億円、営利1.8億円(ほぼ横ばい)
- 人材派遣: 売上2.3億円、営利0.2億円(ほぼ横ばい)
3. そもそも、翻訳市場はどのくらいの大きさなのか?
- 日本で約2500億円と言われています。ただし、ここには観光など全ての翻訳を含む
- また機会翻訳の市場規模は世界で1000億円程度なので、日本は50~100億円規模でしょう
- そもそも翻訳市場は世界的に10%程度伸び続けています。グローバル化に伴いヒトと情報の行き来が増えているからと思われます
- 其の中で、機械翻訳が増える余地は非常に大きく、日本でも軽く500億円~1000億円くらいは見込めると思います。
ということで、市場ポテンシャルとしては、ロゼッタが売上数百億円を上げる程度にはあるかと思います。
4. では、売上を伸ばせるのか?大きく、商品力と販売力の2つに分けて考えてみます
①ベースとなる商品力
- 鍵を握るのは2020年初旬リリース予定の、翻訳精度99%の新商品です。
- ちなみに、現状の翻訳精度は最大95%。これ自体も非常に画期的な商品であり、そのため2017年11月リリース後に右肩上がりで売上を伸ばしてきています。
- 99%の翻訳精度が、どのくらい本当にすごい商品なのか?はまだわかりません。
- 但し、本当に99%であれば、市場への浸透の仕方は格段に変わると思います。
- 95%の精度だと必ず、人間が其のあとにレビューして校正していると思います。
- 一方で、99%であれば、基本は人間はレビューしなくなると思います。即ち、人件費を削る効果が高いのと、そもそも翻訳間違いを気にしなくて良いと言う使う側の心の持ち方が大きく変わると思います。
②カスタマイズされた商品力
翻訳精度を業界ごとに高めるために、いくつかの企業と共同開発の提携を実施しています
- 2018年8月: グラクソ・スミスクライン社、製薬業向け AI 翻訳の共同開発開始
- 2018年9月: IR 情報の自動翻訳の精度向上に向けて、日本取引所グループとロゼッタが実証実験開始
- 2019年1月: 第一三共、AI翻訳の共同開発開始
- 2019年6月: 武田薬品工業、AI翻訳の共同開発開始
- 2019年9月: 飛島建設との建設業向け多機能ハンズフリーシステムの共同開発開始
③販売力
この数ヶ月でいくつもの企業と協業の契約を締結しています
- 10月18日: アプライド社(販売代理店契約)
- 9月20日: SB C&S(販売代理店契約)
- 9月6日: オリックス(見込み顧客紹介に関する業務提携)
- 7月3日: ダイワボウ情報システム(販売代理店契約)
少なくとも色々な打ち手は打っています。
ただ、とにかく一番重要なのはベースとなる商品力。本当に99%の翻訳精度を実現できるのか?が全てかと思います。
可能性としては、十分、売上・利益を大きく拡大できるかと思います。
まあ、現状だと思惑レベルですが、、。
5. 現状の株価は高いのか?
- 2019年度の上半期終了後で、売上19億円、営業利益3.1億円
- 2019年度のifisの予想が、売上45億円、営利7億円、純利益4.7億円
- 今の時価総額377億円なので、PERはちょうど80倍です。
2020年度の僕の個人的な予想は、
- 売上70億円、営業利益13億円、純利9億円
- 前提として、機械翻訳の売上成長率は+100%としています。99%の精度を実現できればさすがにこのくらいは行くでしょう
- PERが42倍くらいですね、、。
さらに、最終的にはどのくらいのビジネスになりえるのか?
- もし99%の精度を実現できれば、この分野はロゼッタが圧勝すると思います。他に目立った競合も居ませんし、、。
- 日本語に絞り、かつ5領域(金融、法務、医薬、化学、IT)に絞り、そこでの知見とデータを蓄積しているので、独占するかと思います。
- だとすれば、少なくとも売上200~300億円、営業利益50億円、純利33億円くらいは行くかと。
- 成長途中であれば、PERが20倍くらいは付くと思うので、時価総額660億円。株価にして、6,500円
6. 次のカタリストは何か?
- 2020年初旬に99%精度のプロダクトをリリースするので、その発表が2020年1月?くらいにあるかと思います。
- それがカタリストとして、株価が上がるか?其の前に、織り込みに行くか?を見ていこうと思います。
ストップ安で一旦株価下がり、売上はそうは言ってもまだ右肩上がり、販売代理店契約も最近実施したばかり、2020年初旬には最強のプロダクトリリース予定あり。ということで、現状のPERは高いですが、逃げる準備はしておきつつ、しばらくホールドしていきたいと思います。
お世話になります。
『日経エレクトロニクス』に、気になる記事がありました。
みらい翻訳社長兼最高経営責任者(CEO)で大阪大学教授でもある栄藤稔氏は「これまでプロの翻訳サービスでは人間、もしくは機械翻訳が訳した文章を人間が校正する2段階の手続きを踏んでいた。NMTの発展で近い将来、人間の校正が不要になる。すると翻訳コストは一気にこれまでの10分の1以下、1語当たり1円以下になる」という。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49000580W9A820C1000000/
これが事実なら、ロゼッタの売上や利益は、それほど伸びないかも・・・