1.売上と純利益
- 第2四半期売上4.56億ドル=約500億円、純利益が2.02億ドル=約220億円
- 上半期合計は、売上9.08億ドル=1000億円、純利益が4.24億ドル=約460億円
- これだけ見ると、第1四半期の方が数字が良く、第2四半期は悪化しているように見えます。第1四半期の数字を計算してみると
- 第1四半期売上4.52億ドル=約500億円、純利益は2.22億ドル=245億円
- やはり売上は微増ですが、利益は25億円くらい減っているので、純利益率で▲5%くらいです。
さてなぜでしょうか?粗利を見てみます。
- 第2四半期の粗利額が2.9億ドル、上半期の粗利額が5.97億ドル、ということは第1四半期は3.07億ドル
- 粗利ベースで、0.17億ドル減ってます。約20億円の減少。これが主な原因です。
- ということは販売価格が下がっているか?もしくは、原料コストが上がっているか?のどちらか、もしくは両方があるようです。
2.売上に占める長期固定契約と、スポット契約の比率
- 3~5年の長期固定契約の売上を見てみます。
- 第2四半期が3.45億ドル=約380億円
- 上半期合計が6.17億ドル=約680億円
- 差分を取ると第1四半期は、約300億円
- 売上は第1四半期も第2四半期もほぼ500億円と同じだったので、第1四半期は60%だった比率が、第2四半期は76%まで上昇しています。
3.この3~5年の長期固定契約により、もう来年以降で一定の売上が確定しています。決算資料を見ると、
- 2018年残り: 7.14億ドル=約785億円
- 2019年: 13.5億ドル=約1500億円
- 2020年: 12.7億ドル=約1400億円
- 2021年: 11.1億ドル=約1200億円
- 2022年以降: 10.9億ドル=約1200億円
2018年の売上合計が約2000億円ですから、やはり75%くらいは長期固定契約で既に販売が終了していることになります。
4.長期固定契約とは何か?
- 各顧客とそれぞれ結ぶ契約ですが、
- 販売量も、販売単価=価格、販売金額が全て決まっている、契約になります。
- ですので、売る側も買う側も、市況による変動リスクを一切排除できるリスクヘッジの契約になります。
グラフテックにとっては、これが吉と出るか?凶と出るか?はわかりません。固定化することで逆に損する場合もあります。
- 例えば3年後に1トン当たりの価格が70万円くらいに下がれば、グラフテックだけは110万円で継続販売できるので得をする
- 一方で今後更に1トン当たりの価格が上がれば、それでも1トン当たり110万円で売り続けるので、損をします
まず、足元の短期で見れば、スポット価格は150万~200万円になっているので、損をしています。但し、黒鉛電極価格は過去何度も上下を繰り返してきているので、必ず時間が経てば価格は下がる時が来ます。それがいつ来るか?次第でグラフテックが得をするか・損をするか?が決まるという契約形態です。
5.グラフテックの今後の見通し
- まずマーケットは引き続きタイトであると言っております。需要が供給を上回る状況
- グラフテック自身の利益においては、2つのポイントがあります。
- 1つ目は、利益率の低下。上記の固定契約で売価は決まっているのに、ニードルコークスなどの原価が値上がりしているため。これは売価を固定したことによって起きている最大のデメリットですね。グラフテックはニードルコークス自体も6割くらいは内製しているので、ダメージは比較的小さめですが、それでも、それなりに利益が削られます
- 2つ目は、生産キャパの増量。詳細はわかりませんが、2018年年内に20%=3万トンくらいキャパを上げられるとのこと。これをスポット価格で売れば、売上と利益の上昇を見込めます
いずれにしても、売価を固定している契約が6割以上を占めるため、今後の黒鉛電極とニードルコークスの価格が上がり続ければ、状況は悪化し、今がピークで下落し始めれば、グラフテックの戦略は功を奏すというのが大きな見立てになります。
6.グラフテックのPERはどのくらいか?
- 時価総額は約7000億円ですね
- 税引き後利益が上半期で4.25億ドル、仮に2018年合計はその2倍として、8.5億ドル=約930億円くらい
- PERは、7.5~7.6倍くらいですね。
やはり、PERは低いですね。7.5~8.0倍くらいがこの黒鉛電極メーカーでは、現状妥当なラインのようです。長期固定契約がメインのグラフテックは業績がこの先5年くらいは安定しているのですが、一方でニードルコークスの価格が上がりすぎると減益していくリスクも抱えているので、長期固定契約がプラスなのかマイナスなのか?がわかりません。まあ、足元だけ見ると損をしているので、少しマーケットはグラフテックに悲観的かもしれませんね。だとしてもPER8.0倍くらいで日本の電極メーカーも見ていた方が無難だなと思いました。
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